43.Zeiss Ikonの使い心地

     
 Zeiss Ikonがやってきて2週間になりますがこの間に6×7判を手に入れるという暴挙に出たため毎日持って出るということは出来なかったのですが実際に使い出すと思った以上によく出来ているなあという部分やもう少しどうにかならなかったのだろうかと思う部分も出てきます。結論的なことを言えば写真を撮る機械としては満足できるものだと思います。しかし写真を撮る道具としてみるとまだまだ未熟に感じる部分があります。機械と道具の違い、またその間を埋めるものは何でしょうか。

1.フィルムローディング

 フィルムのローディング方法は一般的な裏蓋をヒンジで開くタイプです。巻き上げ軸は細部の構造などはもちろん見直されているのでしょうがミノルタCLEと外観は全く同様です。フィルムを挟み込む金属片(プラスティック片)はCLEのように白色(CLEは白色のプラスティック製)の方が薄暗い場所でのフィルム交換には見やすいのではないでしょうか。

 フィルム装填も普段裏蓋をヒンジで開くタイプを使っておられる方は何の問題も無く使いやすい構造になっていると思います。しかし慣れとは恐ろしいものでライカM型のスリットから滑り込ませるフィルム装填になれていると裏蓋が完全に開閉するこのタイプでフィルムを装填しようとするとカメラをどのように保持すれば安定するのか考えてしまい思った以上に手こずります。写真のM2にはラビットローディングシステムを組み込んでいますので多少の構造の違いがありますがM4以降と同じように巻き取りリールのスリットにフィルムの先端を滑り込ませればフィルムローディングが完了します。ラビットローディングシステムを組み込んでいない巻き取りリールを一度抜いてリールにフィルム先端を挟み込んでからパトローネと巻き取りリールをフィルム室に入れるオリジナルのM3やM2でさえこちらに慣れているとZeiss Ikonのような裏蓋をヒンジで開くタイプよりフィルム交換はスムーズに行なえます。

 よく言われるようにM型のフィルム装填が難しいというわけでもなく裏蓋が開閉できるタイプが簡単というわけでもないようです。歩きながらのフィルム交換では慣れているということもあるのでしょうが指の置き場所がなくなってしまう裏蓋を開閉するタイプよりもM型のローディング方法のほうがスムーズと感じてしまいます。

 要するにどちらの方法にあなたが慣れているかということだけで使いにくい、使いやすいという判断になるようです。

 
Zeiss Ikonの巻き上げ軸
 

 

   
ライカM型のフィルムローディング方法

2.グリップ感

 カメラ本体の重量はZeiss Ikon=460g、M3=595g、M2=580gと120gほどZeiss Ikonが軽い。一日手にするカメラとしてはこの軽さは歓迎だ。僕のように右手で握りっぱなしという撮影スタイルの者にとっては尚更です。
 ところが一日中カメラを握っていると、軽いはずのZeiss Ikonのほうが疲れるのだ。
  先日の組み合わせM3+Summilux50mmF1.4=880gとZeiss Ikon+Summaron35mmF2.8=585gと295gも差があるのにも関わらずZeiss Ikonのほうが疲れる。確かに重さはM3の組み合わせのほうが重いと体も認識している。M3にはセルフタイマーが付いていてそれを指掛りにしているので持ちやすいのかなとも思ったのだがセルフタイマーの無いM2でも同様に軽いはずのZeiss Ikonのほうが疲れるのだ。

 おそらく張り革の違いによるものだと思います。M3、M2ともグッタベルカは純正ではありません。OHと塗装時にルミエールのオリジナル品に張り替えています。ライカのグリップ感は張替え前と交換後での違いは少し柔らかくなったかなという感じですが持っていて疲れるとか滑るという感じはありません。Zeiss Ikonの貼り革は滑りやすい材質かパターンなのかもしれません。そのために必要以上に指先に力が入ってしまい疲れるのではないかと考えています。滑り止めを貼って一度試してみる必要があるようです。

   
Zeiss IkonとライカM型の張り革

3.巻上げとシャッター

 フィルムの巻上げはいたってスムーズです。この感触はフィルムを実装して巻き上げても変わりません。スムーズで軽い巻上げ、最も頻繁に操作する部分なので巻き上げの感触というのは大事なことです。僕はカメラにおだてられて写真を撮っているというところもありますので撮る気にさせてくれるかどうかという肝心な部分です。
  Zeiss Ikonの巻き上げトルクの軽さは大歓迎なのですがレバー自身の重さの無さが高級感を損なっているように思います。巻き上げレバーは金属製なのですが非常にプラスティッキーです。アルミ合金?のような軽量な材質ではなく真鍮のように比重が高く、しっとりとした肌触りを持った材質のほうが適材に思います。肌触りだけではなく内部損失の高い材料は巻き上げのがさつな感触を吸収することにも役立ち、摺動部分では摩滅の仕方も感触を悪くする方には働きません。
  ライカの巻き上げレバーは真鍮製ですので上記のような効果があるものと思われます。ただライカの巻き上げレバーは当初からその効用を考えて材質を決定したというより当時の加工技術と入手の容易な材料ということで決定されたものと思われます。

 シャッターは金属縦走り(Zeiss Ikon)、布製横走り(M型)と材質も機構も全く違います。精度は電子式のZeiss Ikonのほうが正確であることは間違いないだろうしAE撮影では中間値でも作動するのでより正確な露出で撮影できることになる。(あくまでも数値的なことでその被写体にふさわしい露出かどうかとは別の話。)
  シャッター音も金属シャッターらしくメリハリのある気持ちのいい音でシャッターが切れます。普段M型とレンズシャッターの中判(ミラーの動作音とショックは大きいです。)を使っている僕には音も大きく振動も大きく感じますが一眼レフを使っている友人にいわせれば普通のようです。ミラーの無いRFカメラとしてはボディの軽さが災いしてか振動が大きいと感じられます。もちろん撮影に支障があるほどの音の大きさやシャッターショックではないが写真を撮っているといい気分にさせてくれるシャッター音も至近距離で人物を撮る時にはかなり大きく聞こえ、気になってしまいます。

 秒間2コマ?で(とっても速くね。)巻き上げると指よりも先に巻き上げレバーが勝手に巻き上げていくような感覚になるほどスムーズです。巻き上げトルクも巻き始めから終わりまで変わりません。カッチリとした巻き上げ感触が好きな人にはちょっと頼りない感触かもしれませんが一度にたくさんのフィルムを通す人でも指が痛くなるようなことは無いでしょう。

 
Zeiss Ikonのシャッターボタンと巻き上げレバーの配置
 
 
   
ライカM2のシャッターボタンと巻き上げレバーの配置

4.その他のこと

 ファインダーの見やすさは発売前から話題になっていたとおり明るくすっきりとした見え方です。ライカより透過度が高いと思いますが何しろオーバーホールをしているとはいえ40年以上も前のライカと比べていますので最近のライカと比べれば同等なのかもしれません。特筆すべきことは逆光の場合でもファインダー内のフレアーは最小に押さえられていて確かにファインダーに施されたツァイスのT*コーティングが見やすさに貢献しているようです。

 ライカには昔はいざ知らず現在はブランド名ほどの(内容)性能が無いともいわれます。僕は半分は正しく半分は間違っていると思っています。数値的な部分では旧来全としていることは確かですしブランドにあぐらをかいたような限定品の数々。これじゃライカがダメになったといわれても仕方がないですね。
  しかしブランドはカッコのよさや販売政策だけで得られるものではなく長年にわたり愛用され信頼を得て初めてブランドという勲章を得ることが出来ます。Zeiss Ikonは写真を撮る機械としてはライカ以上の性能を有しているといえます。
  1/2000秒のシャッタースピード、正確なAE、明るく精度の高いファインダー、性能ではライカ以上のZeiss Ikonですが実際に撮影しているとライカには安心感と信頼感を感じることが出来ます。実際に壊れにくいとか精度が高いという確証があるわけではありませんがフィルムを巻き上げシャッターを切るたびに確信に変わります。現場で写真を撮ることに専念出来、撮影者にストレスを感じさせないフィーリングこそが機械と道具の違いではないでしょうか。Zeiss Ikonは立派な機械だと思いますが使いやすい道具になるにはライカに学ばなければならないこともまだまだありそうですしライカもブランドにあぐらをかくような商品ではなく我々をアッと言わせるカメラの発売を期待したいですね。


Zeiss Ikon(COSINA,ZEISS)とM3(LEITZ)