38.愛しのハッセル・購入編

       

 ハッセルブラッドといえば写真好きなら誰でも知っているといえるスクエアフォーマットのカメラである。スクエアフォーマットは画面サイズから6×6といわれています。有名なところではハッセルブラッド、ローライ、そして日本のブロニカといったところですが残念なことにブロニカはすでに6×6フォーマットカメラの製造を中止しています。これは著しくスクエアフォーマットの需要が減ったことが原因です。もっとも多用されていた印刷の世界での需要がデジタルデータで入稿されるようになり、少なくなったフィルムでの入稿は6×7サイズが主流になっているようです。中古市場を見ればデジタル化の波がもろに被っている事が分かります。プロだけではなく高年齢者のアマチュアカメラマンもデジタル一眼に移行している結果ハッセルが中古店にあふれる状況になっています。中古価格も信じられないような安値が付いており本当に使いたい人達にとってはいい環境かもしれません。

 中古価格の下落は中古の購入ばかり増えて新製品の購入が増えない、新規開発が出来ない、銀塩部門の縮小という写真業界としては悪循環パターンになる訳だが一消費者として言わせて貰うなら現行の商品に魅力が無いことが大きな理由だ。今度発売されるツァイス・イコンのRFカメラのように使ってみたいと思わせる魅力ある商品を開発して欲しい。 ツァイス・イコンのRFカメラは結構な売り上げをするだろう。しかし業界全体とすれば微々たる売上高にしかならない。一般的ではないからだ。一般というものは好むと好まざるに関わらず「デジタル」である。銀塩写真はごく少数の写真家、愛好家の表現手法として残っていくのではないだろうかと思う。現在の消費パターンから見ればデジタル商品は低価格大量生産に、銀塩商品は高価格少数生産にならざるを得ない。

 最近の中古ハッセルの 低価格化により若い世代での利用も目立つようになってきた。彼(彼女)ら曰く、「真四角の画面が面白い。」「ファインダーを覗き込んで撮るのが楽しい。」「最近のデジタルコンパクトと違って簡単に扱えないところや物理的な大きさが逆に写真を撮っている気分にさせてくれる。」ということらしい。要するに「写真を撮るのが楽しくなるカメラ」ということのようだが「ツァイスのレンズの味が・・・」なんて言っている長年ハッセルを使っている人達の本音も結構同じようなところに在るような気がするのは僕だけでしょうか?


ライカ使いとハッセル使い
 巷のカメラ愛好家の中でもっとも品性が下劣な人種はハッセル使いです。その次がライカ使いです。
ライカを長年使っている私ですが世の中のハッセル、ライカ使いには呆れるような人種が多い。ライカ人種は写真も撮らないでカメラやレンズ自慢で終わるので他の人に迷惑をかける度合いは少ないのですが風景写真を撮っているハッセル使いはとんでもない手合いが多い。立ち入り禁止の庭には入るし植物の上に平気で三脚は立てるし挙句の果てには撮影の邪魔だと枝を折ってしまう。ハッセル使いのイメージは最悪です。もちろん100人が100人共、こうではないのでしょうが花のシーズンや紅葉のシーズンに有名スポットに行ってみるとまんざらこの話が大げさでないことがよく分かります。
 文句ついでにもう一つ言わせて貰うなら写真サークルの団体さんは何とかならないのか。高齢者が多い割りに傍若無人な振る舞いが目立つ。人間それだけ年を重ねれば分別というものがあるだろうに。これも日本人特有の団体心理というものなのだろうか、同じ写真好きとして横で見ていて情けなくなる。
 まじめに写真を撮っているハッセル使いの人には申し訳ないが「ハッセルは好きだがハッセル使いはきらいだ。」これは未だに変わらない気持ちだ。

ハッセルには手を出すな

 ライカやハッセルに手を出せない時代が長く、どちらもとんでもなく高いカメラでハッセルは特にプロフェッショナルなカメラという認識が強かった。僕たち庶民でも中古にしろライカやハッセルが使える時代がやって来たとはいえ、まだまだ高価な部類に入る。両方に手を出すことは身の破滅だ。神をも恐れぬ所業だと長年思ってきた訳だが時代が2周ほどした現在、時代は確実に変わっていた。

 ブロニカにRF645という6×4.5フォーマットのカメラがある。最近のものであるから電子シャッターを搭載しプログラムAEなどが出来、簡単に中判写真が撮れるカメラだ。スナップ派には便利なカメラである。ということで欲しくなった訳ですが、価格を調べているとあることに気が付きました。「80mmレンズとフィルムバッグの付いたハッセルの標準セット」と値段が変わらないということです。新品のRF645と中古のハッセルではなく中古のRF645と中古のハッセルが同じ値段だということです。とんでもないことに気が付いた訳です。それは、中古のハッセルが買える!


以前、ハッセルを買わなかった理由
 6×6のフォーマットのカメラは初めてではありません。ローライフレックスを使っています。このローライを買うときに迷ったことはハッセルにするかローライにするかです。そのためブロニカのSQ−Aを買ったぐらいです。SQ−Aはハッセルとほぼ同じ構造をしたレンズシャッター一眼レフです。このSQ−Aを使ってみて気に入ればハッセルをいまいちと思えばローライを購入すればいいという計画でした。現在ローライを使っているということはこの時にローライの方がいいと決定した訳です。その最大の理由はミラーの有無です。ハッセルと同様の一眼レフ構造のSQ−Aにはファインダー像を確認するためにミラーが必要です。シャッターを切るとこのミラーは光路上から逃げる訳ですがその音の大きさは半端じゃない大きさです。人里離れた所で撮影していても飛んでいるカラスが振り返るという代物です。そのせいで手持ちのスローシャッターは苦手で街中のスナップ撮影には全くの不向きです。この結果ハッセルではなくミラー構造の無い二眼レフのローライに決定した訳です。

なぜ今、ハッセルなのか

 決してローライに不満がある訳ではありません。それどころかもう一台ローライが欲しいぐらいです。広角のローライが!広角のローライフレックスといえばあまりにも有名なワイドアングル・ローライと最新モデルのローライフレックス4.0FWです。ワイドアングル・ローライにはツァイス・ディスタゴン55mmF4がローライフレックス4.0FWにはスーパーアンギュロン50mmF4が搭載されています。レンズにはどちらも問題がありません。問題が無いどころかどちらもすばらしい描写をするレンズです。問題なのはいつものように金額です。広角も同じローライが使えれば使い勝手が同じなのでベストなのですが金額がベストではありません。
  話が少し戻るのですが広角が使える中判探しを始め気になった機種というのが前出のブロニカRF645です。6×4.5というフォーマットですがスナップ向きの中判としてはマミヤ6やマミヤ7と並んで最も使いやすいモデルではないかと思います。この中でデザイン的に何とか許せるというものがRF645だった訳です。本当に注文ボタンをクリックする寸前までいったのですが躊躇した理由は6×4.5というサイズでした。
  元々中判のカメラを手に入れた理由が画質のよさでは無く、正方形の画面が欲しいという理由からです。正方形の写真の開放感とこの画面しかありえないと思わせる緊張感が好きだから6×6というサイズを選んだのですから6×4.5の画面に不満が出そうな気もします。またライカやローライフレックスのように機械としての魅力が乏しいのも躊躇した理由の一つです。スクエアなフォーマットと機械としての魅力と考えるとハッセルが浮上してくるのは必然です。中古価格の低下もハッセルへの追い風となってハッセルに広角レンズという組み合わせが俄然、現実味を帯びてきます。ローライとハッセルを使い分ければいい訳です。(自分で言うのもなんだが、すっごい贅沢な発想だなぁ!)

 ライカにローライそしてハッセルとくれば成金オヤジの趣味カメラの様子を呈してきます。どれも高額な時代が長かった(今でも高額の部類ですが)ので誤った認識がはびこっている訳ですが写真を写す機械としてよく出来たカメラたちです。空シャッターを切って喜んでいるのではどのカメラにも失礼というものだ。若い人たちがこうゆう古いカメラでバシバシ写真を撮っている姿の方が健全というものです。僕たちの世代のように憧れとか特別という感覚が無くカッコイイということのようだがそう思って使ってもらえるカメラは幸せじゃないでしょうか。

 そして僕たちの世代では今でも「憧れ」のカメラです。


どのハッセルにする?

 ハッセルといえばフォーカルプレーンシャッターを搭載した1600Fからスタートしたシリーズとレンズシャッターを搭載した500シリーズがあります。昔はフォーカルプレーンシャッターが壊れやすかったのだが今はどうなんでしょうか?人気があるのは500シリーズです。レンズシャッターを搭載した500シリーズはシャッター速度全速でフラッシュにシンクロするのが売りでスタジオ撮影の用途で一世を風靡した機種です。僕たちの年代はハッセルといえばスタジオで女性ポートレートか風景写真というイメージが強い。多くのプロが使っていたのでこのようなイメージが浸透している訳だがスナップ撮影にも最近よく使われているようで写真サイトなどでも四角い画面によくお目にかかるようになった。誰でも買える価格になったことも一因だが四角い画面の楽しさに気付いた人も多いのだろう。

 ここに一冊の文庫本がある。「ハッセルブラッドの時間/藤田一咲」ハッセルの解説本でもなくハッセルとすごす快適な時間を文章と写真で綴った本だ。「お散歩ライカ」という言葉があるがこの本の中で「お散歩ハッセル」の楽しみについても書かれている。ハッセルは何も特別なカメラではなく普段のお散歩のお供にも最適なカメラの一つだと誤解させてくれる。そう誤解なのである。コンパクトカメラのほうが簡単に撮影出来ることは明白なのだが写真を撮る時間を楽しむということにかけてはハッセルのほうが一枚上手ということなのだ。ほかの文章もハッセルの楽しさを伝えるには十分でハッセルを使ってみたくなる本だ。

 値ごろ感があって手が出せそうな機種は500C、500C/Mか503CXというところだ。新品が買える人は500CWを選ぶといいと思う。ハッセルもライカのM型と同じように基本的な部分は変わっていない。マイナーチェンジとコストダウンによる違いだ。「操作感は初期型のほうが優れ...」というところまでライカと同じようである。ライカのことなら授業料もたくさん納め勉強して来たのでそれなりの知識もあるがハッセルは初心者です。どの機種を選べばいいのかよく分からない。古い500Cでもハッセルのよさは堪能出来るなどと書いてあるがハッセルのよさも堪能したいがやはり出来上がった写真が全てなのだ。ハッセルのことが書かれているサイトを訪ねて一通りの知識を得る。サイトの記事は雑誌などの紹介記事と違って実際に使っている人の本音が聞けるので大変参考になる。「早く仲間になりなさい。」という誘惑も多いが(笑)そうして知りえたことは、

1.500C、500C/Mはボディの内面反射ははっきり写真で分かるほど多い。
2.503CXでは内面反射防止処理がされている。
3.500C、500C/Mも内面反射防止処理をしてもらえる。
4.503CXからファインダースクリーンがミノルタ製アキュートマットになり明るくなった。
    (500C/M、503CXは交換が可能なので気に入ったものに変えられる。)
5.操作感は500C、500C/Mのほうが503CXよりいいらしい。
6.CレンズとCFレンズでは絞りの形も写りも違うらしい。

 ボディのデザインは500C/M、レンズのデザインもCタイプとどちらも旧式の方が好きだ。ボディはほとんど違いは無いが両肩に付いた503CXという銘板が野暮だ。レンズは写りが全てなのだがCFタイプは大きくなって美しいとはいえない。好みは500C/Mだが選んだのは503CXだ。内面反射処理がされていることで決めた。なぜならサイト上の写真や雑誌に紹介されている写真に明らかにボディに光が回ってコントラストが低下している写真がある。僕はコントラストが低い目の写真が好きだがレンズのコントラストの低さやプリント時のコントラストの低さとボディ内に光が回ってコントラストが低下することと根本的に違うことだ。ボディ内に光が回ることは避けたい。中古価格に大きな開きが無かったこともあって新しい方の503CXにした。操作感などという感覚的なことを別にすれば500C/Mより503CXの方がカメラとしていいのではないかという全くの勘で選んだというところだ。後日miyackddさん(http://miyack.exblog.jp/)に「503CXで正解です。」という言葉を頂きました。長年ハッセルを使ってきた人の言葉だけになんだか安心です。



HASSELBLAD 503CX chromebody with CF Planar80mmF2.8
RE1425003 (1989)

HASSELBLAD 503CX chromebody with CF Planar80mmF2.8
RE1425003 (1989)


新しい仲間

 購入したのは503CX、CFプラナー80mm、A12マガジンがセットになった標準セットといわれるものだ。
ボディもクロームメッキのタイプ。ブラックモデルに比べると少し派手な気もするがハッセルらしいのはクロームメッキモデルと思っているのは僕だけでしょうか?ローライフレックス3.5Fと同じ様な仕上がりだがハッセルのほうが頑丈そうな雰囲気、実際も頑丈なのだろう。
 巻き上げのフィーリングは以前使っていたブロニカSQ−Aより重いような気がするがこんなものなのだろうか?ローライフレックスに慣れているから重く感じるのかもしれない新品を知らない悲しさだ。ミラー動作音はブロニカに比べるとくぐもったような音になり少し静か。プラスティックボディと金属ボディの違いか甲高く余韻が響くようなことは無い。レンジファインダーや二眼レフばかり使っているので久しぶりにこのようなミラーが戻らないカメラのシャッターを切るとブラックアウトが不安に感じる。

 掌の中のハッセルはとっても心地よい。ローライもライカも心地よいカメラだ。
どれも機械式の古いカメラばかりだがなんの不便も無い。それどころかもっとも使いやすいカメラ達だ。
修理をすればいつまでだって付き合ってくれる。相棒と呼ぶに相応しいカメラ達だ。
今日は新しい仲間が増えた記念日だ。