31.コンパクトカメラの進化

       

 先日京都へ行く用事が有ったのでせっかくだから早い目に到着して少し写真を撮ろうと目論んでいたのですが両手に持った荷物の量と寒さにあえなく撃沈。
普段バッグにはライカ3Fをほり込んでいるのですがいくら小型と言えども両手が使えないと全くお手上げです。こんな時には片手でさっと撮れるコンパクトカメラの方が絶対有利ですね。用事を終えた帰りの電車の中ではもう頭の中は「コンパクト・・・コンパクト・・・」という状態でした。当たり前のことですがシャッターを切らない限りライカであろうがハッセルであろうが只の荷物なのです。飾り物で無い限り写真機はシャッターを切って始めて写真機なのですね。

 自宅に着いてさっそくNETで調査開始。なんと言ったってこの前に買ったコンパクトと言えば最近は父親専用となっている1996,7年に買ったコンタックスのTVSなのですから最近のコンパクトカメラに関しての知識は皆無状態、真っ白け状態。先ずはどんなものが販売されているのか調べてみました。


進化
あるいは
衰退

 コンタックスTVSはUになりそしてVに、T2はT3にリコーのGR-1はGR-1s、GR-1vと変わりGR-21という焦点距離が21mmのレンズを搭載した機種まで販売されていた。まさしく「販売されていた。」のだった。リコーに続き京セラもほとんどの銀塩カメラの生産中止を発表した。(RTSVも生産中止に含まれているので近々にオーバーホールをしておかないと修理も出来なくなりそうだ。)銀塩コンパクトは早々にデジタルに変わってしまいそうだ。デジタルコンパクトも商売にならない現在、銀塩とデジタルの優劣をここで問うた所で詮無い話だが一写真ファン、写真機ファンとしては良いカメラが無くなっていくのは残念なことです。と脱線した話を元に戻そう。

 どうせ中古しか買えないのだからリコーのGRシリーズにしてもコンタックスのT3にしても暫らくは修理も可能なことなので選択肢になります。TVSの時代からどれくらい良くなっているのか興味津々と言ったところです。
 そして最後まで選択に迷った(これくらいしか思い浮かばなかったのでした。)機種は リコーGR-1v、 リコーGR-21、 コンタックスT3、 ミノルタTC-1 の4機種です。使い勝手はさすがに発売時期の新しいものほど良く考えられています。

 どの機種も各メーカーの自信作だけあってレンズの描写はこの4機種とも問題がありません。問題が無いどころか優秀といってもいいと思います。その優秀さというのはコンパクトとしてはという条件ではなく、カメラ全体の中で見てもということです。非球面レンズの採用や高屈折率低分散ガラスの採用、マルチコートの採用とレンズ設計技術の進歩はすごいものです。「よく出来た一眼レフと同等かそれ以上の描写」を目指したと各社がいう通り、どの機種を選んでも描写は満足できると思います。
 つぎにAFの精度と速さですが発売開始時期が最も古いTC-1(1996)でさえもTVSの時代とは比べ物にならないぐらい早く、正確になっています。開発時期の違いでリコーやコンタックスはマルチタイプのAFを搭載しミノルタのAFよりは一歩リードしている感じです。各仕様はメーカーサイトやファンサイトで比べてもらうとして基本性能は10年前のものと比べることは全く無意味です。それほどに進歩しています。
 又外装に使われている素材もチタンやマグネシューム合金などを使い耐久性の向上をはかり、持つ喜びをも感じられる美しい作りになっています。

 おそらくフィルムを使うコンパクトカメラというジャンルは無くなっていく運命だと思います。ここに上げたような「すごい」と表現してもいいようなコンパクトカメラはこれから先に発売されることも無いと思います。欲しいコンパクトカメラを探すためにたくさんのサイトを見て最も感じたことはそれぞれのカメラに愛情といってもいいほどの想いを持って使っている人の数の多さです。それでも企業としては商売になるほどの人数ではないのでしょうが、この想いだけは伝わって欲しいと思います。


 

RICOH GR-1v
一眼レフ以上の写りを目指し
全紙の引き伸ばしにも耐える
高画質を達成したGR-1の最終機。
オーソドックスなスタイルだが
そのおかげで最も持ち易い。

RICOH GR-21
GRシリーズの最後に登場した
焦点距離21mmのレンズを搭載。
21mmを使いこなせる人にだけ
許される贅沢。
CONTAX T3
高級コンパクトと言うジャンルを
作り出したTシリーズの最終機。
ツァイスの写りは健在
カラーで撮るなら最もお勧め。
MINOLTA TC-1
「最高の描写性能を
限界の超小型サイズに凝縮」を
実現した技術の塊のようなカメラ。
今でも世界最小の35mmカメラです。

 
写真は各メーカーのHPからの借用です。

思想が無いと使いにくい

 各社各機種に特徴がありますが昔のようにこの製品が優秀だといったようなことはありません。よく長所、短所といいますがここに挙げた機種は長所、短所という言葉で片付けられるようなものではありません。それは各メーカーのコンセプト、方向性というものが濃厚に反映されているからです。何を大事にするか、どういう風に使って貰いたいかと言う開発者の意思が感じられます。使う側にもはっきりとした思想が無いとここが良くない、ここが使いにくいと短所ばかりになってしまいます。ある意味で使い手を選ぶカメラに出来上がっているようです。
  選択に先立って色々な人のサイトを見た結果も同様な印象を受けました。サブカメラとして画質に惚れこんだ人たちではズームになっていない事やプログラムモードの無いこと(TC-1)など全く問題にもなっていないのだが便利な高級コンパクトカメラと捉えている人たちの間ではこれほどの高額なのだからズームレンズにして欲しい、ストロボの自動発光が無いと不便というような意見が占めているようだ。
  もう一度言うがここに登場したカメラは開発者、設計者と思想を同じにする者が選ぶカメラなのです。開発者や設計者、TC-1に至っては実際に組み立てている人(1台1台担当者が最後まで組み立てていますので製造番号で誰が組み立てたか分ります。)までの顔が見えるこれらのカメラを買うという行為は彼あるいは彼女のシンパになると言う事かもしれません。
  オスカー・バルナック(ライツ)、パウル・フランケとラインホルト・ハイデッケ(ローライ)、ヴィクター・ハッセルブラッド(ハッセルブラッド)、米谷美久(オリンパス)のように、これらのコンパクトカメラはカメラと開発者がイコールで連想される稀有なカメラになる資質は十分です。現にミノルタTC-1は開発者の谷井純一氏にちなんで谷井カメラと呼ばれています。

GRと
Sonnarと
G-ROKKOR

 GR-1vにはGR28mmF2.8、GR-21にはGR21mmF2.8がT3はゾナー35mmF2.8、TC-1にはG-ROKKOR28mmF3.5が搭載されています。どのレンズも優秀なレンズです。各社、パンフレットにもMTF曲線を載せています。別にこのMTF曲線が優秀だと言うのではありません。(結構優秀ですけどMTF曲線だけで写りが分る訳では無いしね。)ただ各社がコンパクトカメラのパンフレットに掲載するほど、写りに自信があると明言していることです。色々な作例を参考にしても違いはあるけれどもそれは「重箱の隅」の話です。レンズの描写と言うのは最も関心のある事ですがここでは描写については書きません。なぜならどのレンズも本当にすばらしいレンズ達だからです。後は最も大事で最もあやふやな「好み」で決めるしかないですね。

THE
MINOLTA
CAMERA
TC-1

 購入したのはミノルタTC-1にしました。と言うか、GR-21(焦点距離21mm)は使いこなせる自信が無かったのでそれ以外の在庫を調べたらTC-1しか在庫が無かったというのが本当のところです。全く消極的な理由で決定したことになりましたがその後、色々調べて見ると自分に一番合ってることが分りました。
  プログラムAEが無いので使いにくいと言うことも聞きますが露出優先AE時にF3.5、F5.6を選択している場合には露出がオーバーになる時にはシャッターが絞りの役目をして露出オーバーを回避する(高輝度側超自動露出というらしい)ようになっています。最も多用するのは絞り優先AEという使い方になりますし光の状態を見れば最初に適当と思われる絞り値を設定しておけますのでプログラム、絞り優先ということをあまり考えなくても良いと思います。せっかくの円形絞りを活用した方がいいでしょう。この円形絞りもF3.5、F5.6、F8、F16と4つの絞り値しかないこともマイナス要因に数えられているようですが実際の使用において問題となることは無い。普段、他のカメラを使っていても1/3段や半段を調節することなどほとんど無いですもんね。虹彩絞りを採用した無段階絞りを止め技術陣が完全円形絞りを採用したことに拍手をしたいですね。フラッシュも自動発光モードが無いことを不満な点に上げている人もいるが私にとっては不満どころか大満足な処置です。光らせたい時には光る、光らせたくない時は光らないとハッキリしているのが良いです。開放がF3.5とリコーやコンタックスに比べて半段暗いことも気になりません。気になるとしたら半段暗く設計したにも係わらず周辺の光量落ちがリコーに比べても顕著なことです。空のような明るい部分が多い画面では絞り込んでも周辺光量の低下はなくなりません。
  フィルム感度設定にマニュアル設定を設けている所も憎いところです。現像時に増感、減感処理をする自家現像派にとっては最も歓迎すべきことです。露出補正ダイヤルを使ってフィルム感度を変えることも出来ますが、最初からマニュアル設定を設けていることはすごく親切です。
  露出計も中央重点測光とスポット測光を搭載しているし一眼レフでも採用が見送られることの多い視度調節機構まで採用しています。ファインダーもコンパクトカメラだからというような手抜きは一切無く、真面目に作られたファインダーです。もちろんマニュアルフォーカスも可能です。
  印象は写真の解かる人が作っているなぁという感じです。「最高の描写性能を限界の超小型サイズに凝縮」という開発当初に考えられたスペックを実現したカメラです。変更されたのは横幅が95mmから99mmに拡大されたことだけです。100mmにしなかった、たった1mmに技術屋の意地を感じます。
 初期にはフィルムの平面性に問題が有ったそうですが現在は改良されているそうです。
G-ROKKOR28mmF3.5とM-ROKKOR28mmF2.8(Mマウント)の写りの違いはG-ROKKORの方がコントラストも解像力もアップしていることもあり、曇り空の下での撮影にも係わらずシャドー部がストンと落ちてしまうこともあります。(モノクロです。)フィルム感度の設定でコントラストを調整すれば大丈夫そうです。きっとカラー撮影に最適な設計になっているのでしょうね。好みから言えばM-ROKKOR28mmF2.8のおっとりとした写りが好きです。
 TC-1のTCはThe Cameraという意味だそうです。当時のミノルタの意気込みが分りますね。

 

MINOLTA TC-1(右)とCONTAX TVS(左)
TVSに比べて二まわり位小さく、
重さも375g(TVS)と比べ185g(TC-1)と約半分です。
こうして並べるとなんだかよく似ていますね。

 新しいカメラほど高機能で使い勝手もデザインもよくなっていますが写りに関しては古いからダメということはないですね。初代のTVSの写りも全く遜色ないですね。ほとんどモノクロでしか撮影しないからかもしれませんがレンズに関してはコンパクトカメラの内臓レンズでも交換レンズでも古いから良くないと言う事は無いようです。

 今回検討したどのカメラもポケットから取り出してさっと撮影しても間違いなく写ります。それもかなりの高画質で、実際どのカメラを選んでも期待を裏切られることはないと思います。レンズの焦点距離の違いとデザインで、あっ・・・それからお値段で選べば良いのではないでしょうか。

 そのお値段ですがGRシリーズの初期モデルのGR-1はさすがに値ごろ感がありますがGR-1s、GR-1v、GR-21(特に)は人気も有り、品薄も手伝って結構高値が付いています。TC-1は元の値段が高いことも有って安いとはいえませんが新品の時の価格と比べると最も値ごろ感があります。