26.バルナックに手を出しちゃ、病気も末期です。

   

 バルナック・ライカというのはご存知のようにオスカー・バルナックが生み出したM型の先代のモデルです。先代と言うよりも35mmフォーマットカメラとして初めて成功したカメラです。大陸手札判(9×12cm)の密着プリントが一般的な時代に引き伸ばしと言う方法を定着させたとも言えます。面積比で10倍ほどの違いがあるにもかかわらず同等の画質を提供することが出来たのでしょう。これはオスカー・バルナックの功績だけではなくレンズ設計者のマックス・ベレクの努力の賜物です。マックス・ベレク設計のレンズはマイクロズマール→アナスチグマット→エルマックス(アナスチグマットの名称が変わった)→エルマーと進化していきます。ベレクのレンズがあってこそバルナック・カメラの名声も不動のものとなりました。

 Ur Leica(1913)から始まったバルナック・ライカはVg(1957)までT型(A型、B型、C型)U型、V型と発展し事実上M3が発表されるまで発売されていたVf 型が最終モデルと言えます。M3発表後に発売されたVg 型はバルナック型の発展モデルとはまた違ったポジションにあると思います。

 右の写真のモデルは最終モデルのVf です。Vf はその前の機種Vc にフラッシュシンクロ機構が組み込まれたモデルです。Vf の兄弟には低速シャッターを除いたUf、Uf から距離計も除いたTf があります。
Vf 型(1950〜1957)にはシャッタースピードが
大陸系列(T,B,1,1/2,1/4,1/10,1/15,1/20,1/30,1/40,1/60,1/100,1/200,1/500,1/1000)の初期型と
国際系列(T,B,1,1/2,1/4,1/10,1/15,1/25,1/50,1/75,1/100,1/200,1/500,1/1000)になった後期型があり初期型はシャッターダイヤルの周りに記入されているコンタクトナンバーの数字が黒色で書き込まれているのでブラックシンクロと呼ばれ同様にシャッタースピードが国際系列になったモデルには赤色で書き込まれているのでレッドシンクロと呼ばれ区別されています。セルフタイマー付きのモデルはすべてレッドシンクロです。総生産台数は184,300台でバルナックタイプとしては最も多い。


LEICA Vf Selftimer Less Model
くしくもバースデー(バースイヤー)ライカを手に入れたことになりました。
製造から52年を迎えようとしている訳ですが人間の方がはるかに痛みがひどい。
ライカの方が長生きのようだ。
セルフタイマーの無いモデルの方が美しいと思うのは私だけでしょうか。
必要な部品を在るべきところに並べて
必要なラインで囲ったら出来ましたという感じのボデー。
機能の必然から生まれたデザインは美しい。
 
   

LEICA Vf Selftimer Less Model

 今までバルナック型を購入する気がなかったのでLマウントのかわいいカメラ程度の認識しか有りませんでしたので購入に当たって一夜漬けの勉強です。一口にバルナック型と言っても数種類のモデルがありますが大きく分けるとレンズが固定されているモデルとレンズ交換が可能なモデルそして連動距離計が搭載されるまでのモデルとそれ以降に分けられます。
 最初期のレンズが固定されているモデルは余りにもプリミティブすぎ実用の見地から見ても価格から見ても実用品の値段ではありませんので ボツです。使い勝手がいいのはやはり連動距離計が搭載されてからのモデルでしょう。
 連動距離計が始めて採用されたのは1932年のU型(D型)からです。このU型でバルナック・ライカは完成されたと言ってもいいと思われます。なぜならばU型にスローシャッターを組み込んだ物がV型、1/1000秒を追加したモデルがVa 型、フラッシュシンクロを加えたモデルがVf 型と進化していく訳ですが 原型はU型で完成されています。もちろん板金ボデーからダイキャストボデーになったり、それに伴ってボデー寸法が変更されたり軸受けにベアリングが採用されたりと細部にわたっては改良されています。

 スローシャッターの無いモデルがシンプルでいいのですがスローシャッターダイヤルが付くべき所にグッタベルカの丸い板で目隠しされていてデザイン的にはイマイチです。最初からスローシャッターモデルを設けていないU(D)型のみがこの丸い円盤が無くデザイン的には○なのですが、1932年(昭和7年)といささか古すぎる(ちゃんと整備された物なら全く問題無いです。)のと値段がお散歩カメラ向きではありませんでした。日常持ち歩くカメラという理由付けでの選択ですので余り高額なのは困ります。NETで調べた中で低価格な物から程度と見比べて最もお買い得と思われるボデーを探しました。

 内容の良さと価格から選んだのは徳島の「吉田カメラ」で見つけたVf セルフ無しモデルです。セルフタイマーの無い方がデザイン的には好きですので願ったり叶ったりです。価格もバルナック・ライカの中ではお買い得価格でした。シャッター幕が2枚とも交換されているとのことですのでシャッターも調整済みと考えられます。またシャッター幕交換時に清掃ぐらいは行われているだろうと思われるので各部に問題が無ければ買いです。
 吉田さんからのメールで上記のことの確認と「ファインダーも外観も美しい方だと思います。」という一言で購入を決定しました。こういう時には信頼できるお店があるということは良いことです。一度も現物を見ないどころか写真すら見なくても安心して注文出来ます。

まさに軍艦部と呼ぶにふさわしい。
シャッター速度もヨーロッパ大陸系列のブラックシンクロと言われる初期のタイプです。
バルナック・ライカに似合うレンズはマックス・ベレクにちなんでやはりエルマーでしょうか?
エルマー50mmf3.5あるいはエルマー35mmf3.5
いっそのこと最新のコシナ・フォクトレンダーの
カラースコパー50mmf2.5なんかも小型でいいかもしれない。
どちらにしても余り大きいレンズは似合わなさそうです。
レンズフードも無い方が格好は良さそうだが古いレンズにはフードは必需。
 
   
 やって来たVf はライカポケットブックで調べてみると1952年製のシャッター速度がヨーロッパ大陸系列のブラックシンクロと言われる初期のタイプです。購入するまで製造番号を調べることもしなかったのですが1952年生まれと言うことは私と同い年と言うことです。はからずとも「銀一」が提唱するバースデー・ライカを手に入れたことになりました。
 
梱包から出したVf は52年の歳月を感じさせないほど美しい外観でした。各部の動作もスムーズで問題は無いようです。撮影は明日にすることとして細部を観察します。なんてったって初バルナックですから、遂にと言うかとうとうと言うかエライ物に手を出したような気がします。・・・きっと気がするだけですよね。

製造番号.608762 (1952年製造)
刻印もLeicaの下にはD.R.P.と言う表示です。
M3の時代にはDBPになっています。
Vf 後期のモデルにはErnst LeitzとWetzlarの表記の間に
GmbH(有限会社)の表記が追加されています。
   
1.ファインダーはピント合わせ用とビューファインダーと2個有る。
   連動距離計用のファインダーが向かって左側に有りピント合わせにはこちらのファインダーを使う。巻き戻しノブと同軸上に視度調節用のレバーが有りファインダー像がハッキリ見える位置に調節できるのだがレバーの先端が操作し易いようにボデーから僅かにはみ出しているのが災いして直ぐに触れ、動いてしまう恐れがある。(52年も前のカメラにいまさら検討して頂きたいとも言えませんね。)距離計用のファインダーとビューファインダーの間隔は中心距離で6mmです。Va までは20mmも離れていました。使いやすく進化した一例ですね。
   
2.ビューファインダーにはブライトフレームが無いので50mmレンズで大体これくらいの視野が写るという事らしい。35mmだとファインダーの外側2割り増しぐらいの範囲が写ります。28mmだとずっと外まで写る。21mmだとずっとずっと・・・ということだ。
   ブライトフレームはVg に50mm、90mmのフレームが搭載されたのが最初です。それ以前のバルナック型にはブライトフレームは有りません。50mmの標準レンズの使用を前提としてファインダー視野が決められています。それ以外のレンズを使用するには本来外付けのファインダーが必要ですが、お散歩ライカとして使うのには外付けファインダーを付けるとチョッと大げさになりそうです。また価格もファインダー一個がこのカメラより高いとなるとおいそれと手が出ません。もし使うのならコシナ・フォクトレンダー製で十分です。それでも2万円位は覚悟しなくてはなりません。ちゃんと視野を確認して撮りたいのならM型を持ち出せばいいことなのでお散歩ライカには外付けファインダーは必要ないと割り切りましょう。

徳島新聞に包まれてやって来たVf
阿波の国は江戸時代、徳川に弓を引いた国である。
中古品も江戸とは異なる勢力圏である。
品種も然り。価格も然り
   
3.スローシャッターを使うにはメインのシャッタースピードダイヤルでスローシャッターを選択しなければならない。
   スローシャッターが無くてもよかったのですが予算に合うバルナック型がたまたまVf だったのでオマケにスローシャッターが付いて来たという感じですが1/30以下(メインダイヤルでは1/40まで)がスローシャッターの受け持ちなので有ってよかったかなと思っています。後期モデルではスローシャッターの受け持ちは1/25以下(メインダイヤルでは1/50まで)になっています。1/15(1/16)迄がメインダイヤルの受け持ちならスローシャッターは無くてもいいと思います。
 スローシャッターの無いモデルはシンプルでいいのですがスローシャッター付きと同じボデーを使用している(コストの問題とライツ社は後でスローシャッターを取り付けるグレードアップサービスをしていた。)ので本来スローシャッターダイヤルの付く位置に丸い目隠しの板が貼ってあるのですがデザイン的には好きではありません。U(D)型のように最初から何も無い形状の方がきれいなデザインだと思います。
   
4.前面にあるスローシャッターダイヤルにはロックボタンが有るのだが小さいので操作がしにくい。
   何度か操作していて使い方が判りました。スローシャッターダイヤルを正面からつかむと親指の腹でボタンが押されロックがはずれ回転します。最初は他の指でボタンを押し込んで親指と人差し指でつまんで廻そうとしていたので余計に廻しにくかったのでした。使い方の判った今はうまく作っているなぁと感心しています。
   
5.シャッタースピードの設定はシャッターをチャージしてから設定しなければ受け付けないので巻き上げ前にセットしてもその前に設定されたシャッタースピードのままになっているので注意が必要だ。
   フィルムを巻き上げてからシャッタースピードを決めるという順番はバルナック・ライカの使い方で覚えておかなくてはいけないことです。シャッターを切るとシャッタースピードダイヤルもレリーズボタンも回転します。一軸で回転しなくなったのは後のM3からです。
   
6.フィルムの装填は裏ブタが開かないので底からすべり込まさなければならないので面倒そうだ。
   M型でもフィルムの装填が面倒と感じている人は大勢いると思いますがバルナック型は裏ブタが開閉しないのでもっと面倒そうです。ベースプレートを開けるとフィルム装填の注意書きが書かれています。フィルムの端から10cm先に入る側のパーフォレーション部分を切り取れと書かれています。奥のスプロケットにフィルムが引っかかって装填しにくくなるので切ってしまわなければならないようです。最近はテレフォンカードの様な薄手のプラスティックのカードを先に挿入してその上を滑らせてフィルムを装填する方法が紹介されていますが安全な方法はやはり指定通りにカットして使う方法でしょう。
 35mmのフィルムは100 ft の物から自分で巻いているのでどちらにしろリーダー部は加工しなければなりませんので他のカメラに使う分よりもバルナック用としてリーダー部を長くカットした物を作っておけばいいだけです。
 想像とは違って指定通りにカットしたフィルムはすんなり装填されM3やM2より楽チンなくらいです。M型とバルナック型を同時に持ち歩くことはないので専用のフィルムを用意しておけば装填には問題ないでしょう。現地でフィルムが足らなくなったりカラーを使いたいときにははさみでカットするなりカードを使って装填すればいいのだ。
 

 Vf (バルナック型)の特徴は上記のようなことなのだがそれを改善したものがM3型ともいえる。
今までM型を使用していて今回バルナック型を手に入れたことによってライカの歴史を遡上している訳だがバルナック型でライカのカメラのほとんどが出来上がっているようだ。M型に於いてもその基本はなんら変わらない。より便利に使いやすくと発展して来たに過ぎない。

  21世紀の空に向かってシャッターを切ってみる。半世紀を生きて来たバルナック・ライカのシャッター音は今の時代に何を伝えようとしているのでしょうか?

   

Vf 三態

 
 

Vf +Voigtlander28mmf3.5

Vf +Voigtlander35mmf2.5

Vf +Leitz Elmar5cmf3.5
   
 時代的にもデザイン的にもエルマーとの組み合わせが一番しっくり来ます。もちろん写りもGoodです。コシナ・フォクトレンダーのカラースコパー28mm、35mmとの組み合わせも専用フードのおかげでカッコイイがファインダーのケラレは大きいです。もっとも両方ともファインダーでは画角の確認が出来ないので適当です。