第13回 Focomat Tc がやって来た

     

 玄関を入ると目の前にその荷物があった。横50cm奥行き60cm高さ1mのサイズに黒い猫のプリント模様。キタ〜来ました。フォコマート!
2階の部屋に運び込み開梱、分解清掃をする。使う前から壊しているんじゃないです。あくまでも整備ですお間違えの無いように!

 こうして分解して各部の様子を見ると精度の造り方(遊び)が素晴らしいです。どの様な機械でも動作するには各部の遊びが必要なのですがその遊びの量(クリアランス)の取り方がその場所に応じた量になっています。スーットとかカッチリとかシックリという言葉でしか表現出来ないのですが人間が手で扱う機械は特にこの様な感触が大事です。機械の動きが手に安心感、操作性の良さとして伝わって来るからです。精密感=クリアランスの小ささでは無いことをFocomatが教えてくれます。
  手の掛かる製造方法が可能だった時代の産物です。それも特に手を掛けたLEITZの産物です。大事にこき使ってやろうと思っています。Ucだったらもっとすごい造りなのでしょうね。


← 開梱してとりあえず記念写真を!
 電源ケーブルのソケットがコラムトップから出ているタイプです。
 ケーブルもソケットもバラシて点検しましたがしっかりしていました。ランプハウスに取っ手が付いているので1961年以降の製造です。赤丸Leitzマーク付です。

→ コラム長は80cmの物、写真じゃわからないけどコラムを清掃したら顔が映り込むほどピカピカになりました。


 

←FOCOMAT Tcの銘板と製造番号の銘板
「FOCOMAT TcとMADE IN GERMANY」 が誇らしげです。

→カメラでおなじみの社名「ERNST LEITZ GMBH WETZLAR」
Type 42-484.43
No. 000033970 です。何年製かお分かりの方が居られましたら教えてください。


←台板を裏から見たところです。合板にニス(ウレタン?)仕上げイーゼル固定用のクランクレバーの様子、専用イーゼルを使用する際に必要です。イーゼルは置くだけではなくガッチリ固定するという発想が有ります。結線部のカバーが欠品、ネジだけ付いていました。本来はベーク製の板ですので自作します。(無くてもいいんですけどね)

→ランプハウス上部の反射板とソケットの様子
 反射板も傷一つ無く以前使っていた方の愛情が感じられます。


←ランプハウス下部の様子

→ランプハウス下部を分解すると、(写真上段左から)ランプハウス下部本体、遮熱(遮光)板、(写真中段左から)コンデンサーレンズ、コンデンサーレンズ押さえバネと固定リング、遮熱板固定リングネジ、(写真下段)スペーサーリング2種類。
  右の銀色に写っているのがアンチニュートンリングフィルターに併用する厚さ3mmのリング。
 遮熱板の下にはホコリが溜まっていましたがどこにもサビ一つありません。


←写真上段からヘリコイド、オレンジフィルター、同固定ビス、位置止めストップ。オレンジフィルター枠にもWETZLAR、LEITZのマーク。性能や機能には全く関係ないのですが感激です。

→ネガキャリアー部分
パーツの形が優雅ですね。


←アンチニュートンリングフィルターを上から覗いたところ。ミケ(我が家の猫)が何事かと偵察に現れる。

→赤いリングが付いている所が可動部の給油口です。アームの擦動部各所に有ります。ミシン油を1滴さしておくと動きがスムーズになります。(滲むほど注油しないこと。埃が溜まるだけです。年に1度か2年に1度位、動きが重くなってきたら少量注油しましょう。)
  バネのヘタリも無く動きはGOOD!


←ヘリコイド部分と自動焦点用のカム。こういう部分は機械っていう感じです。

→自動焦点用のカムの形状。この微妙なRが焦点を合わし続ける秘密です。
  ライツのカメラも同様ですが機械仕掛けで色々な動作をさせています。電子コントロールというものが無い時代だと言ってしまえばそれまでですがライツの技術者のアイデアにはいつも脱帽です。


←自動焦点用のカムの取り付け位置の反対側に設置されたディスクブレーキ。本体手前のレバーを握るとこのブレーキがリリースされアームの上下動を自由にします。

→標準の24mm×36mmネガキャリア(VNEOO)


←アンチニュートンリングフィルター17652Y(NESOO)
  取れない汚れが2箇所ほど有りますが取り付け向きを調整することでフィルム面に掛からないのでOKでしょう。

→引き伸ばしランプ
 フィリップス社製150W/220Vのオパール電球、100V使用だと75W相当になります。とっても暗いですよ。いい写真が焼けそうな?


←FOCOTAR50mmF4.5(#1883542)
 強い光を当てると僅かにクモリが分かる程度です。引き伸ばしには問題ないでしょう撮影レンズではもっと酷いのも有りますが全く(厳密に言うと有りですが)問題ないです。問題が一つだけ有りなんです。エクステンションリングDOORXが付属していませんでした。このリングが無いと引き伸ばしが出来ません。中古品を探すか代用品を探しましょう。

→で、見つけました!
  Nikonのエクステンションリング。有効長13.5mmです。ヘリコイドの位置から見るとフジの中間リング20mmでもOKのようです。


←Nikonのエクステンションリングを取り付けたところ。ピントはバッチリ来ます。

←1mm厚のワッシャーを2枚作ってみました。
  正価で\1,500梅田のヨドバシにて\1,260+ポイントです。あまり売れる物ではないので在庫は1個だけですが普段も在庫しているそうです。(エライぞヨドバシ!)

→Focotar+Nikonのエクステンションで取り付けた様子。

 純正に拘らないのなら1,260円であります!


←「Focomatを使おう!」の管理人さんからフォーカシングローラー(本当の呼び名は?です。)が無いですよ〜と指摘がありました。寸法も教えていただきました。
  ほんでもって作ってみました。使うのは1個だけですが溝付き2個と溝なし1個を作りました。(外形は手持ちの材料の都合で少し小さいのですがカムと接する部分の径はオリジナル通りです。)

→フォーカシングローラーを取り付けたところ。
  直径が大きくなるとヘリコイド繰り出し量が小さくなり、直径が小さくなるとヘリコイドの繰り出し量が大きくなるのでヘリコイドの調整範囲内で直径を決めればいいと思います。


←暗室でフジFD690と並べたところです。
 大人と子供、新しいと古いといった対比です。35mmはフォコマート、6×6はFD690といった使い分けになりそうです。
 8×10を焼く訳でもないので本当は1台で十分なんですねぇ。現にフォコマート以外で引き伸ばされたいい写真はいっぱい有ります。いい写真の条件はこんなところ(カメラや引き伸ばし機)にあるのではないことを百も承知しているのですが、自分の力の及ばないところを少しでも助けて貰おうとしているのかもしれません。
 でも単純にこういう機械って好きですね。実際に引き伸ばし作業をしなくても眺めているだけで幸せな危険思想の持ち主です。

  写真を撮るということがデジタル写真を指すような時代ですから引き伸ばし機が画期的な新技術で製品化されるようなことはこれからもう無いような気がします。
  先日お祭りを撮影に行ったのですがそこにいる何百人というカメラを構えた人たちの中に自家現像をしている人の割合はどれ位いるのでしょう。こういうHPを作ってそれを見に来てくれる人がいるから自分の周りには関心のある人がたくさんいるように感じますが実際には非常に少数な人種でしょうしこれから先モノクロ自家現像ブームのような事が起きるとも思われません。別にブームになって欲しいと思いませんが機材や消耗品がどんどん手に入り難くなる事だけは避けたいです。
  一人でも多くの人が写真の世界に足を踏み込んでくれれば後は私が底なし沼に引きずり込んでさし上げます。